2016年5月12日

名古屋の土蔵


Dozo (earthen storehouses) in Nagoya

黄金週間は名古屋から奈良県の宇陀まで行った。
名古屋でよい土蔵をいくつか採集したので報告する。

名古屋は大都会だ。
あらかたビル街で、かろうじて通りの名前に古い町の面影がある。
しかし市内のいくつかの地点に古い建物を求めることができる。そのひとつが四間道しけみち、今の住所では西区那古野1丁目界隈になるが、名古屋駅至近に城下町の町並みが奇跡的に残っている。また四間道と直交する円頓寺えんどうじ商店街にも趣ある建物が見られる。

四間道は堀川の西側に沿うて通る道で、桜橋から景雲橋の間あたりに古い建物が集中して残る。堀川側に土蔵が並び、反対側に町家が軒を連ねているが、土蔵は水害をおそれてか高い石垣に載っている。これが名古屋の土蔵のかたちで、屋根のやや急な勾配、刻み袖瓦、鳥衾瓦、それと薄い鉢巻が特徴的だった。

窓には庇を付ける。1階の窓の庇は平側いっぱいに取り付けている。
四間道では木材そのままの造りが多いが、塗り籠めて持ち送りに雲形を施したのもあった。土扉は分厚いが掛子塗としない。この土蔵の屋根は本瓦葺で、影盛の背後に漆喰で2、3巻き追加しているのは珍しい感じがする。


面白いのは土蔵と土蔵の間だ。石垣の具合や庇の食い違いからすると、もとは別箇だったのをつなげたように思える。軒の波形や開口部の木瓜形のナマコが大変愛らしい。全般的に漆喰の造形は凝ったのが多く、所々よいかたちがある。とくに前包みを漆喰と瓦で市松につくるのが土蔵に限らず多い。

名古屋から名鉄で15分ほど、緑区有松ありまつというところにも古い建物がよく残っている。ここは宿場町で、絞り染めが名産。本うだつのある立派な商家の合間にこのような土蔵が建っている。2階の窓を高く小さく開けるのが地域的特色であるようだ。1階の窓には塗籠の庇が付き、持ち送りは雲形の造形。持ち送りを雲形に塗り籠めるのは京都や大阪、奈良に顕著なもので、関西寄りの造り方。腰はナマコ壁で、黒漆喰仕上げ。

四間道、有松の他に熱田、車道〜代官町、中小田井、守山を歩いた。
喫茶店のモーニングが美味かった。